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東京地方裁判所 昭和46年(借チ)3017号 決定

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔主文〕本件申立を棄却する。

〔決定理由〕一 本件の資料によれば次の各事実を認めることができる。

1 本件土地を含む豊島区高田一丁目旧三七七番二宅地一、〇一九平方米(右土地は昭和四六年二月二七日三七七番二、同番の四、同番の五に分筆された)およびこれに隣接する同町三七七番一、三七八番等の宅地は相手方の所有であつたが、相手方は、申立外有田栄吉こと牟栄圭に対し、右土地のうち昭和四〇年一一月頃一三七坪を、その翌年頃右貸地を含めて合計二三二坪位を材料置場並びに加工作業用下小屋(材料の盗難、火災発生等の予防のため見張人の仮宿泊の設備を含む)として使用する目的で期間を一年と定めて賃貸した。

2 右賃貸借契約はその後毎年右と同一の約定で更新されてきたところ、右申立外人は右賃借地上に建築資材用の鉄材加工業に必要な作業場等の設備を設置するとともにいわゆるプレハブ製の建物数棟を建築し、事務所、宿泊所等に使用してきた。本件建物は右プレハブ製建物のうちの一棟である。

3 ところで、昭和四四年頃、相手方は豊島区から前記三七七番、三七八番等の土地について、区立児童公園として利用する目的で譲渡方の申し入れを受け、これを承諾した。そこで、相手方は右申立外人に対し、右賃貸借地の明渡を求めて協議を重ね、その結果右土地のうち西側部分一五〇平方米については昭和四五年一一月末日までに明渡す旨の合意が成立したが、その余の部分については合意に至らなかつた。

4 相手方は昭和四五年九月右申立外人に対し、右賃貸借契約についてその期間満了日である同年一一月末日以降更新できない旨の通知をなすとともに、合意に至らない東側部分の土地の明渡方法等についてさらに協議の申入れをなした。しかし、昭和四六年に至つても申立外人が右東側部分の土地の明渡に応じなかつたため、相手方はやむなく前記譲渡予定の土地のうち右部分を分筆除外し、その余の部分を昭和四六年三月八日豊島区に売却した。

5 相手方は昭和四六年三月頃、右申立外人に対し、本件土地を含む前記東側部分七二四、〇五平方米(二一九、三〇坪)について、従前の契約と同一の目的で昭和四七年一二月三一日まで賃貸する旨の提案をなしたが、合意に至らなかつた。

6 申立人は本件建物について昭和四五年一月二一日に開始された任意競売手続において、昭和四六年一月二九日これを競落して所有権を取得し、その旨の登記を経由した。

二 以上の事実を認めることができ、右事実によれば、相手方と申立外牟栄圭間の本件土地賃貸借契約は業務用材料置場として使用することを主目的とする臨時設備その他一時使用のため借地権設定と認めるのが相当であり、また本件全資料によつても、申立人が主張する右契約の目的がその後建物所有の目的に変更されたことは認めがたい。

相手方は右賃貸借契約は昭和四五年一一月末日の期間満了により終了したと主張するので案ずるに、前認定のとおり、相手方は、申立外牟栄圭に対し期間満了前に更新拒絶の通知をなしたのであるが、同通知書には右意思表示とともに前記東側部分の土地については協議のうえ善処する旨の記載があり、期間満了後も右協議が継続され、その際相手方において昭和四七年一二月末日まで右土地を賃貸してもよい旨の提案がなされていること、右提案について右申立外人の了承は得られなかつたが、右の事実からすれば相手方としては協議が調うまであるいは右提案の期日満了までは右申立外人の右土地の占有使用を黙認してもよいとの意思を有していたと推認でき、相手方が右協議とは別に右土地の即時明渡を要求し、あるいは申立外人の右土地の使用について異議を述べたことを認むべき資料はないことから考えると、右土地七三四、〇五平方米については、契約が民法六一九条により黙示に更新されたと認めるのが相当である。

三 そこで、本件申立の適否について案ずるのに、本件土地の賃貸借契約が一時使用のものであり、相手方は昭和四五年以来現在まで右契約の解約を希望し申立外牟栄圭と協議を続けていること等前記認定の事情のもとにおいて、賃借人の交替は相手方にとつて財産上の給付によつては償えない不利益を受けることになると認められ、結局本件申立は借地法九条の三、一項に照らし理由なきものといわざるをえず、その余の点に立ち入るまでもなく棄却を免れない。

目録<略> (河村直樹)

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